ケアホ-ムに勤務している看護師です。入所中の42歳の男性について質問します。この男性は以前より37.0度台の微熱が続いています。(高熱のため、H24.9,H24.10入院加療をしました。Max42度。ここまでの高熱が出る原因は不明で、解熱したためENTしました。)現在も37.0度台前半をベ-スに 36.0~37.0度で経過し、まれに38.0度を超えることがあります。発汗と全身の緊張を伴うことが多くみられます。体交等で、コモリ熱をにがしたり、ク-リング、清潔保持、気温(室温)の調節などで対応しています。内科の往診はうけており、採血も行っていますが、大きな問題はないとのことです。脳にダメ-ジを受けてしまったことが原因でしょうか、対応としてはどうでしょうか。アドバイスをお願いします。
一般論として体温は熱産生と放熱のバランスで決定されます。ヒトの様な恒温動物の場合は熱産生や放熱は中枢でコントロ-ルされています。熱産生の場は肝臓と筋肉が重要です。特に筋肉の熱産生は状態により大きく変化します。極端な寒冷環境にさらされると中枢は筋肉に命令をして震えを起こし筋肉の熱産生を多くするのはその例です。放熱は主として四肢の表面に近い血管を拡張させ循環している血液の熱をそれより低い室温に放熱することと、発汗による蒸発熱によります。重症の脳損傷で脳幹部まで影響が及んだケ-スでは時として中枢の体温調節機能が十分でなく環境温度に影響されやすい場合もあります。このケ-スでは体温が上がる場合に発汗と全身の緊張を伴うとのことですから、筋緊張により熱産生が過剰に起こり、それを調節するために発汗が起こっている可能性が強いと思います。このような状態になっているときに四肢の末梢が暖かければ、それは熱放散を促進している証拠で、それを裏付ける所見と考えます。重症の脳損傷の患者さんでは除脳硬直、あるいは除皮質硬直の姿勢をとっている場合が多くあります。このような状態の患者さんは覚醒時には筋緊張が上がり、少しの刺激で筋緊張が非常に亢進して体温の上昇と発汗が起こります。睡眠中はこのような患者さんでも筋緊張は低下するので、発熱することはあまりないのではないでしょうか。回答者が勤務している病院でも過去にこのような患者さんを10人以上経験しています。対策としては以下のようなことが考えられます。疼痛刺激は筋緊張を高める要素となるので、体位交換などを頻繁にして安楽な姿勢をとらせること、褥瘡など痛みを伴う体表の損傷がある場合にはその治療と、除圧などで痛みの少ない体位をとることが重要です。また、ジアゼパムなどの筋弛緩と鎮静作用のある薬剤を処方する場合もありますが、これは当然患者の覚醒状態に影響するので、その得失を考えて処方する必要があります。放熱に関しては、そけい部や腋窩を冷却する方法がよく行われますが、布団をはいで、四肢を露出する方が効果があります。現在行っている方法でよいと思います。このケ-スの様に脳損傷の患者の筋緊張により体温が上昇することはしばしば見られますが、ほとんどが38度台までです。38度程度の体温上昇で比較的短時間で自然に体温が下がる場合にはそのまま経過観察しても差し支えないと思います。
42度の体温上昇があり、入院を必要としたエピソ-ドは別の原因かも知れません。熱産生の基となるエネルギ-源はもちろん食事ですから、筋緊張が低下してくると必要カロリ-は少なくなるので、経管栄養などで正確に同じカロリ-摂取を続けている場合には体重の増加が見られ、これも一つの指標となります。