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  • くも膜下出血後遷延性意識障害となり目がみえていないようです、それを調べる方法はあるのでしょうか?
  • くも膜下出血後遷延性意識障害となり目がみえていないようです、それを調べる方法はあるのでしょうか?

    ■Question

    くも膜下出血後遷延性意識障害となり、1年9ヶ月経過した65歳の主人のことについて質問します。目がみえていないようです。それを調べる方法はあるのでしょうか。救命救急センタ-の脳外科の医師の話では,「視力がないわけではない。像が結べないのだろう」ということでした。視力検査をお願いしたのですが,「見えているのかどうか,当人が的確な反応を示すことができないので,眼科に依頼できない」と言われました。現在でも、赤いストラップが付いたパルスオキシメーターを目の前にぶら下げると,取ろうとします。ぼんやりと見えているのか,空気の流れを感じるのか,あるいは盲視なのか,分かりません。遠近が分からないようで,15cmぐらい手前で,つかもうとしています。焦点はあっていません。

    ■Answer

    まず、「目が見える」ということについて一般的なお話をします。

    我々が普通「目が見える」といった場合には、例えば目の前に犬がいたら、これが犬だと判ることを「目が見える」といいます。これができるには、以下のような機能が必要です。

    1. 眼球に光りが入り、網膜に犬のイメ-ジが投影される。
    2. 網膜の光を感じる細胞が興奮してその信号が視神経を通って後頭葉の視覚野まで到達する。
    3. 視覚野で捕らえられたイメ-ジが頭頂葉の連合野に伝えられ、側頭葉に蓄えられたその人の犬の記憶と照らし合わせて、その像が犬であることが認知される。

    以上の過程がすべて機能していてはじめて、目の前にあるものが犬だとわかる(認知)されるのです。

    ご本人が認知しているか否かはご本人の反応から知ることができます。犬の写真を見せて、「これはなんですか?」と尋ねて「犬です」という答えが返ってくれば1)から3)までの機能は完全であることが判ります。「目がみえていないと思う」ということですから、このような反応が得られない状態であると想像します。

    目の前の視野で目立つものを動かして、それを追う目の動きが明らかに見られれば、ほとんどの場合2)までの機能は働いていると考えられます。しかし、この状態では認知しているかどうかは判りません。情報が後頭葉の視覚野まで届いているかどうかは特殊な脳波検査(視覚誘発電位)の結果などがある程度の情報となる場合もあります。言葉による返事が得られない場合は認知をしていないと考えられがちですが、仮に認知をしていても、返事が出来ない場合もあり得るので、認知をしていないことを確実に知ることは極めて困難だと考えています。見えていない、認知が出来ないとあきらめるより、認知があるかもしれないと考えて、常に声をかけ反応を観察することが重要です。お手紙では氏名や生年月日が言えるとのことですから、認知機能はある程度以上あると思われます。家族の写真などを見せて名前を尋ねるなどの方法で繰り返して反応を確認してください、反応がえられた場合は「見えている」と考えて良いと思います。パルスオキシメ-タを見せるとつかもうとするとのことですので、見えている可能性は高いと思います。

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