第33回日本意識障害学会総会・学術集会
会長挨拶
国際医療福祉大学大学院医学研究科 脳神経内科学 教授
永山 正雄
この度、第33回日本意識障害学会総会・学術集会を開催させて戴くこととなり大変光栄に存じます。これまでの本学会の歩みと、これからのわが国の医療と医学のあり方を見据えて、本学術集会のテーマは「意識障害をめぐる国内外の最新動向と今後の方向性」、としました。
大局的にみた場合、意識障害をめぐる医療の大きな問題点は、1)急性期にたとえ専門医による意識障害診療が行われていても、必ずしも包括的な最新、最善の医療が行われているとは限らないこと、2)急性期病院における通常数週間以内の管理が終了した後は、ほとんどの場合、意識障害が残存していても慢性期病院、療養型病院に転院となり、多くの場合、脳神経系専門医の目から遠ざかることとなること、の両者です。前者は細分化された医療の問題点であり、統合、全身を診ることが求められます。後者はやむを得ないことではありますが、急性期を過ぎた後は、たとえ意識障害が残存していても慢性期病院、療養型病院に転院となり、通常、脳神経系専門医の目から遠ざかることとなることです。これらは臨床医、医科学者は元より、病院・看護師・リハビリテーションスタッフ、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、事務職員ほかすべての医療従事者間の知識、専門性、技術、考え方、感性の共有、コミュニケーションによる最先端、最新の医療の患者さんへの提供の標準化により大きく改善することが出来ます。また国際的には、2019年にNeurocritical Care Society(米国神経救急・集中治療医学会、NCS)とアメリカ国立衛生研究所(NIH)が巨大プロジェクトCuring Coma Campaign(昏睡治療キャンペーン)を立ち上げて以降、昏睡状態、遷延性意識障害の治療は神経救急・集中治療の世界的トピックとなっています。
本学術集会では、意識障害をめぐる国内外の最新動向と今後の方向性を学び実践するためのプラットフォームとなるように、国際性、学際性、多職種の観点に富んだプログラムとし、患者さん、ご家族の皆様にも有益な学術集会とする予定です。本学術集会が新しい時代の医療と医学を切り開く一助となれば望外の幸せです。学会員は勿論、非会員の先生方、メディカルスタッフ、患者さん、ご家族、学生の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。